前作から格段に進化した、濃厚なドラマと爽快感ある世界基準のアクション!「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」感想レポート

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6/18(金)公開の映画「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」。コロナの影響で延期されていましたが、無事公開されました。

2019年に公開された前作からの続編。前作ですでに日本の域を超える、まさに世界基準のアクションを展開していましたが、今回も「主演」兼「ファイトコレオグラファー(アクション振付け)」として参加している岡田准一を中心に、さらにそのスケールが増して帰ってきました。

ドラマパートでは、前作から出演しているキャラクターはもちろんのこと、今回新しく登場した宇津帆(堤真一)、佐羽ヒナコ(平手友梨奈)、鈴木(安藤政信)を加えて複雑に絡み合う人間関係が、この作品にさらなる深みを与えています。

そして忘れてはいけないのが”笑い”。表情ひとつ崩さずにシュールな笑いを誘う岡田くん、鋭いツッコミを見せるヨウコを演じる木村文乃さん、全力で笑いを取りに来るタコ社長役の佐藤二朗さんの演技には、笑わずにはいられません。

コロナで延期された鬱憤を晴らすかのごとく、爽快なアクションと深みのある人間ドラマに最後まで目が離せません!


※CAUTION※

ここからはネタバレを含んだ感想となります。まだ映画をご覧になっていない方はご注意ください。

まず最初はファブルの暗殺シーンから始まりますが、姿も見せずに一瞬でターゲットを殺すさまは、ファブルの凄みを感じさせ、恐怖すら感じます。「あれ、間違えてホラー映画観ちゃったかな?」って錯覚します。

そしてヒナコとの出会いのシーン。殺された反動で運転手がアクセルを踏んだまま、ヒナコを乗せた車が暴走し、ファブルが止めに入ります。予告や紹介映像で何度も見た車を使ったアクションシーンが、挨拶代わりに冒頭から繰り広げられました。はじめから「これ日本のスケールじゃないでしょ!?」というレベルの高い、岡田くんの息を呑むアクションシーンに引き込まれました。平手ファンにとっては、この後車椅子生活になるのがわかってはいても、見ていて辛いシーンです。

そして時は移り変わり、ヒナコは講演会をしている宇津帆と共に、車椅子での生活をしています。

宇津帆は、耳の不自由な子に手話で対応するなど献身的に慈善活動を行う姿と、裏では人を攫って身代金を奪い、そのうえで平然とした顔で証拠隠滅のために殺すという、二面性のあるキャラクター。それを演じる堤さんのギャップのある表情、演技はすさまじかったです。それになにより、「フライ,ダディ,フライ」「SP」シリーズで共演してきた岡田くん&堤さんの組み合わせが見れたのが、嬉しい限りでした。

その夜の山中でのシーンは衝撃。土に埋めるためにクレーンを使うのかと思いきや、クレーンをバーンと上げて、首に繋がった紐が引き上げられて攫われた人は殺されるというのは、斬新で衝撃的なシーンでした。そのクレーンを操縦していた鈴木は、宇津帆側の人間であり、プロの殺し屋なので悪ではあるのですが、ヒナコの身を案じたり、ヨウコにボコボコにやられたり(笑)、最後にファブルと協力してヒナコを救うなど、とても人間味溢れる魅力的なキャラクターで、好きです。

公園でヒナコとファブルが出会うシーンも印象的ですね。鉄棒に必死に掴まりながら、立ち上がって歩くためのリハビリをするヒナコ、それを黙って、絶妙に気になる距離から見つめるファブル。宇津帆の偽りの優しさを目の前で見てきたヒナコからすると、優しさ(偽善)に対して思うことがあるようですね。でも、ファブルの優しさは少なくとも純粋で、偽善とは違う種類のものです。鈴木がベンチに座っているファブルに不意打ちでキックを食らわせるシーンは、岡田師範の好きそうなアクションだなと思いました。

ファブルがチラシを持って宇津帆の事務所を訪れるシーンは傑作でした。ここも事前の紹介映像で出てきましたが、極度の猫舌のファブルが超慎重にコーヒーを飲むシーン。宇津帆の話が聞こえているのかわからないくらいコーヒーをフーフーして、そして「熱っつ!!」とのけぞる。笑顔のなかったヒナコが少しずつ心を開く大事なシーンでもありますが、観ている我々は笑ってしまってそれどころではありません。

貝沼君(好井まさお)は前作の最後にファブルから、ミサキ(山本美月)へのストーカー行為に釘を刺されていたのに、まだ懲りてなかったんですね。それを宇津帆に利用されて、挙げ句の果てにミサキちゃんに包丁を向けるのですが、あのシーンはファブルも部屋にいたので特別心配はしてなかったです。案の定、すんでのところでファブルによって倒されます、6秒どころか1秒もかからずに。場の空気を読んだ、読みすぎて見当違いだったタコ社長の対応もよかったです。社長に抱き締められたファブルの足が宙に浮いてブラブラしてたのは第二の爆笑ポイントです。

そして前述した、ヨウコの家に鈴木が押し掛けてくるシーンですが、ヨウコがあんなに一瞬で勝ち、鈴木が一瞬で負けるとは思いませんでした。そのあとファブルが首もとにナイフを突き立て、死を覚悟したときの鈴木の表情がめちゃめちゃリアルで印象に残ってます。ヨウコの家といえば、料理を巡ってのファブルとヨウコの掛け合いも面白かったです。

そしてアクションシーンにおける一番の見所となる団地パニック。予告でも流れるシーンです。

宇津帆の部屋に仕掛けられたトラップにすぐ気付いて爆発を避けるシーン。スローモーションなのですが、颯爽と塀を乗り越える身のこなしはかっこよく、でも顔が真顔のままなのが逆に面白い。そこから次々と刺客が襲いかかりますが、逃げる団地の住人に悟られず、スマートに倒していくさまは圧巻です。

そしてクライマックスとなる山中でのシーン。映画が進むごとにその狂気さを増していく宇津帆が、ついにヒナコの前で本性を現します。胸糞悪くなるような言葉の数々に、ヒナコに代わって宇津帆を殺してやりたくなります。ヒナコ自身の怒りも頂点に達し、爪に血を滲ませながらついに車椅子から立ち上がります。公園でのリハビリの成果であり、まさに「クララが立った!」状態です。

しかし不運なことに、そうして歩き出したヒナコの足は、ファブルを殺すために宇津帆が仕掛けておいた地雷を踏み、離せば爆発してしまう状況に。そこにファブルが現れ、鈴木と協力してヒナコを助けるシーンは手に汗握る展開です。クレーンのシャベル部分を足に被せ、タイミングを合わせてファブルがヒナコの足を引いて助けます。

爆発の瞬間にスローモーションになって、ヒナコの走馬灯が流れます。友達と笑い合って楽しそうに学校の教室で過ごす姿や、反抗期の勢いのまま家出をして、宇津帆の売春組織に連れていかれそうになる様子、そしてその時に会った、ファブルの目出し帽から覗く瞳。

結果的には靴の先を焦がすだけで無事助かったヒナコと、それを助けたファブル、鈴木。それを見ていた宇津帆は右手に隠していた手りゅう弾をとっさに投げつけてきます。その瞬間鈴木の銃が火を噴き、宇津帆の眉間を撃ち抜きました。その手りゅう弾は実は栓が抜かれておらず、ファブル曰く「撃つように仕向けた」行動だったとのことですが、結局、宇津帆の真意は何だったんでしょう。本当に「ファブルに殺された弟の復讐」が目的だったのでしょうか。ヒナコに銃を向けられた時も、驚きや落胆だけではない、どこか受け入れるようなそぶりもあったと思います。最後まで掴みどころのない人間でした。

全て解決したクリスマスの夜。ファブルが家の屋上でヒナコからの手紙を読んでいましたが、読んだら燃やしてくれというヒナコの言葉のまま、その手紙を燃やします。せっかく書いたのに、別にそこまでしなくていいのにと思ってしまいました。でもヒナコが半年後、夏を迎えるころに元気に散歩ができていることを切に願うばかりであります。

エンドクレジット後には、ファブルとヨウコの会話を微笑みながら盗聴するボスの姿が映ります(笑)。整骨院のような場所で働いており、最後は壁に架けられた人の頭の解剖図がフォーカスされて幕を閉じます。これにはどんな意味を含んでいるのでしょうか。原作を読んでいたらわかる事なのかもしれませんが、私は純粋に続編を臭わせる演出だったのではと思いました。


岡田くんのアクションは見るたびに進化していきますね。さらなる続編にも期待です。この後公開を予定している「燃えよ剣」も楽しみです。今度はまた侍(厳密には新選組の副局長)になっちゃいますが、また現代劇でのアクションも待っています。

岡田くんとは今回は明確な敵対関係にありましたが、堤さんの共演はやはり見ごたえがありました。部屋で鈴木に銃を突きつけられて覚悟を問われていたシーンでは、「SP革命篇」の国会議事堂地下でのシーンが頭をよぎりました。そして堤さんだからこそ出せる、宇津帆の狂気を感じました。平手演じるヒナコに手を出す役どころ、というのは見ていて複雑な気持ちではありましたが、それも含めて宇津帆になりきっていた演技に脱帽です。

今回一番いい意味で期待を裏切ってきたのは鈴木を演じる安藤政信さんでした。ただの悪ではなく、ヒナコを気遣う優しさだったり、「プロの殺し屋」という枠にとらわれない矜持を感じました。ヨウコには簡単にのされるところはかわいそうなくらいでしたが。そのあとの一瞬で死を悟り、涙がぶわっと溢れてくるシーンは、今でも忘れられないです。一番気に入ったキャラクターかもしれません。

そしてヒナコ演じるてち。映画の続編であり、今回のヒロインであり、車いすでの生活や悲しい過去を背負うといった難しい役どころでしたが、見事に演じ切りました。「影のある役」という点では、過去に演じてきた役や世間のイメージと合っているのかもしれませんが、それだけではない、ヒナコというパーソナリティを最大限に引き出す素晴らしい演技でした。

仮に続編があったとしても、物語的に出演するかは不明ですが、師匠兼友達、そしてお父さんでもある岡田くんと培った絆というものは素晴らしいものがあるので、今後も共演があることを期待しています。

この夏は、殺しをしない普通の暮らしを命令された「伝説の殺し屋」と、殺さずの誓いを立てた「伝説の人斬り」が、日本映画界を席巻してくれています。